[ Age is just a number ] 巨人から学ぶ若さの秘密〜対談シリーズ〜

第1回(5/6):KDDI共同創業者 千本 倖生

〜千本流、生涯現役の仕事術〜

2024-05-23

阿部養庵堂薬品 代表・阿部朋孝が、あらゆる業界の第一線で活躍する巨人たちとの対話を通じて、若さと成功への知見を得る対談シリーズ。

記念すべき第1回は、現KDDIの創業者・千本倖生さんにお話を伺います。

千本さんがどのようにして若々しさを保ち、長年にわたる成功を収め続けることができたのか、その秘訣を深掘りしていきたいと思います。

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A Iでは教えられない、経験と知識

阿部 例えば、現代の日本のリーダーでいうと、柳井(正)さん(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)はどうなのでしょうか?

千本 彼はリーダーの側面と、投資家として一流の側面を両方持っていると捉えています。

阿部 千本さんは柳井さんのような日本のリーダーを育成するという思いが、やはりおありなのでしょうか。

千本 あります。昨日までアメリカに行っていて、明日からまたアメリカへ旅立つのですが、若い人たちも連れて行って、現場を見て勉強してもらっています。私の中で、経営の1つの指標にしているものに“リーダーの資質”があります。

リーダーの資質の中には、その人の動く旅行距離、旅程が含まれています。つまり、旅程に比例するということは1つのテーゼなのです。どれだけ動いているか、どれぐらい現場を見ているか。

私はなぜそんなにも動いてるのかというと、それは現場を見る事を重要視しているからです。現場には現場の人にしか見えない問題があるので、実際に見て把握することが大切なのです。そのためには、インターネットでいくら色々なところに行ったって意味がないですよ。自分で行かなくては。

阿部 海外には月に何度ぐらい行かれるんですか。

千本 毎月2回程行っています。今月(2024年2月)は、3回海外に渡ったので大変でした。自分の足で歩いて、自分の手で触って、自分の鼻で匂いを嗅ぐ、ということをしない限り情報は得られないので、現場を見ることはリーダーとして重要な要素です。

阿部 なるほど。僕もフットワーク軽くいることを肝に銘じておきたいです。

千本 気楽に行ったらいいですよ。実際に行ってみると”Aだと思っていたものがBだった”と、現場でないと分からないことがたくさんあります。

根底にある「生かされていることをトランスファーする」という義務感

千本 私は80歳まで生かされているのだから、生かされていることをトランスファーしないと意味がありません。ですから、今までの知識や経験を後世へ教え、伝えていくことは私の責務だと思っています。これはデジタルで5GやAIが台頭しても、生きた経験を教えることはできません。自分だけが美味しいものを食べてちゃいけないのです。

世界を股にかける千本先生だからこそ見える、これからの世界のトレンド

阿部 そこでちょっと質問なのですが、千本先生は、通信事業で『KDDI』と『イーアクセス(現『ワイモバイル)』から創業されていらっしゃいます。通信事業の次は、再生エネルギー事業に転身をされました。そして今回顧問に就任いただいた我々の『阿部養庵堂薬品』というのは、不老長寿に関する事業です。

不老長寿というのは、今現在、世界中で研究も投資も進んでいる、まさに次のビッグバンと目されてる分野ではあるのですが、この、“不老長寿”というテクノロジーについて、今後の展望などをお聞かせいただけますでしょうか。

千本 先日、『CES』というラスベガスで開催されている世界最大級のIT・デジタル関連のイベントへ行ってきました。全世界から15万人もの人が来場するイベントです。コロナウイルスの流行時を除いて、毎年行っているのですが、今年出展していたものですごく面白いと思ったものが、5点ありました。

1つは「ヘルスケア」です。ヘルスケアは、これから大産業になるので、阿部養庵堂薬品とも関係してきますね。

阿部 技術の展示会で、ヘルスケア関連製品がたくさんあったのですね。

千本 そうですね。今やヘルスケアはアメリカの東海岸を中心にバイオエンジニアリング*で長寿研究を行う企業が参入し、ジェフ・ベソスが4500億円を投資したり、OpenAI創業者のサム・アルトマンが資産の半分を老化研究に投ずるなど、ライフサイエンス領域のビジネスは今後さらに世界で大きく拡大していくことは明確です。

阿部養庵堂はいち早くヘルスケアに着目し、日本で初めてNMNを食料品として扱えるよう厚労省へ働きかけるなど、フロントランナーとして日本のヘルスケア分野をけん引ししていますね。顧問としても一ユーザーとしても、今後の成長を大変楽しみにしている企業です。

*生物学的なシステムやプロセスを工学的な手法で設計、構築、改良する学問領域。これには遺伝子操作、タンパク質工学、細胞培養、バイオプロセス工学などが含まれる。

阿部 ありがとうございます。そのほかに注目したものはありますか?

千本 2つ目はAIです。今はAIが大革命を起こしている真っ只中で、100年後に今の時代を振り返った時、産業革命に匹敵する大革命が起きていると思います。

3つ目は、やはり半導体です。ついこの間までは石油が産業の最大の資源でしたが、2020年以降に台頭してきた半導体は、これまでにないほどの最大の資源になると考えています。

4つ目はグリーン革命です。世界ではすでに、RE100(「Renewable Energy(再生可能エネルギー)100%の略称)のグリーンエネルギーで作られた製品であることが製品購入の条件になってきており、日本ではソニーやパナソニックが大改革を行っています。”グリーン革命”は私たちの生活全般に関わる大きなキーワードになります。

5つ目はモビリティです。EVはテスラやBYDが著名ですが、会場ではサムスンやLGがEVカーを発表していて、先進的な車載システムなど電子製品メーカーとしての勢いと熱量を感じましたね。

6/6に続く

編集後記:インタビューを終えて

せんもと さちお

千本 倖生

KDDI共同創業者 京都大学大学院特命教授 阿部養庵堂薬品 顧問

Co-founder of KDDI, Distinguished Professor at Kyoto University, Advisor to Abe Yoando Pharma

千本財団 公式HP

1942年奈良県出身。京都大学工学部電子工学科卒業。 日本電信電話公社(現 NTT)入社後、フロリダ大学Ph.Dを取得。 1984年に第二電電株式会社(現 KDDI)を稲盛和夫氏らと共同創業し、専務取締役、取締役副社長を歴任する。慶應義塾大学 大学院教授を経て、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学の客員教授のほか、世界最大の通信社・ロイター取締役を務める。1999年 イー・アクセス株式会社創業。2005年 イー・モバイル株式会社(現 ワイモバイル)を設立、代表取締役会長兼CEOを務める。2014年 株式会社レノバ社外取締役に就任、翌年には代表取締役会長就任。2023年 Assurant Global Strategy Architect就任。同年、多摩大学 特別客員教授就任。