[ Age is just a number ] 巨人から学ぶ若さの秘密〜対談シリーズ〜

第1回(4/6):KDDI共同創業者 千本 倖生

〜千本流、生涯現役の仕事術〜

2024-05-17

阿部養庵堂薬品 代表・阿部朋孝が、あらゆる業界の第一線で活躍する巨人たちとの対話を通じて、若さと成功への知見を得る対談シリーズ。

記念すべき第1回は、現KDDIの創業者・千本倖生さんにお話を伺います。

千本さんがどのようにして若々しさを保ち、長年にわたる成功を収め続けることができたのか、その秘訣を深掘りしていきたいと思います。

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上昇気流に乗りつつある、これからの日本に必要なリーダー像

阿部 最近ですと、学生起業された方や、若い経営者の方で「18時以降は予定があるので帰ります」と退社する経営者も多いというようなことを耳にしました。それを聞いて、僕は「日本は大丈夫だろうか。株価が最高値を更新して“これから”という時に、ちょっと心もとないな」と感じてしまったのです。若い方達の勢いはどうなんだろう、と。また違う価値観があるのかもしれないので、何とも言えないのですけれども。

千本 私は、日本は2023年で景気・相場が回復基調に入ったと思っています。過去が30年ダメだったと新聞が書いたとしても、これからもダメだということはありません。私は半年前から言ってきましたが、その後、株価がうわっと上がりましたよね。

阿部 上がっていますね。破竹の勢いです。これは一体何が要因なのでしょうか。

千本 やはりベースは企業収益です。1980年のバブルの時代は、企業収益がついていなかったのです。「買うから上がる、上がるから買う」で実態がない状態で株価が上がっているように見えていましたが、今回は明らかに実態があります。日経を見ていても、8割の企業が増収増益になっています。この株価については、かなり実態の裏付けがあるので、私は高すぎるとは思いません。この30年の間に、日本でやっと株が戻ったでしょう。アメリカではその間にも株価を更新し続けて、10倍以上になっています。だから、私は株価が5万円になっても別に不思議はないと思います。アメリカはそれで言うと、20万ぐらいになっているんだから。

阿部 なるほど、まだまだ上向く可能性はあるということですね。

千本 今株価が上がっているのは、トヨタやパナソニックなどの大企業だけですが、日本の90%を占める中小企業の株価は上がってないんですよ。この中小企業の株価が上がらない限り、そこで勤める従業員は幸せになりませんね。幸せにするなら、株価に関係なく給料を上げるしかありません。ただ、これから中小企業の株価が上がってきたら、本物になりますよね。

阿部 久しぶりに、この日本が元気になりますね。

千本 私は良くなると思います。これから2050年に向けて、日本は躍動の年になると思っています。

阿部 これは楽しみですね。‍

千本 楽しみです。世の中的には、みんな下を向いてるから「違う」となってしまいますが。これからは“上を向け”と言いたいです。

阿部 そうですね。また、例えばTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)の熊本工場新設の話題や、国内企業の海外工場の国内回帰など、投資が集まってるという良い側面もありますね。

千本 1つのいい側面ですね。ただ問題もあって、TSMCに引っ張られて、その工場を日本に作ってもらってる、というのはダメですよね。日本からTSMCのような企業が出ないと。自分たちで開発できるようなバイタリティを、もういっぺん作らないといけない。

阿部 そのバイタリティーというのは、それこそ戦後の経営者の方々が持っていたものをイメージしたらよいでしょうか?それこそ盛田昭夫さんや、本田宗一郎さんですとか。

千本 そうですね。現代なら、TSMCのモリス・チャンはすごかったですよ。私はモリスをよく知ってるけど、今、93歳かな。まだ、現役ですよ。20年前、「半導体に対しては絶対投資しない、投資しても意味がない」という時代に、モリス・チャンは東芝やモトローラなどに対して「俺はやる」と言って、何兆円といった金額をバーンと投資したのですよ。それがTSMCです。

‍これがリーダーの役割です。“決断する、リスク取る、巨大な投資をする”。盛田さんや稲盛さんなど、昔はそういうリーダーがいたのですが、今はいないですよね。

5/6に続く

編集後記:インタビューを終えて

せんもと さちお

千本 倖生

KDDI共同創業者 京都大学大学院特命教授 阿部養庵堂薬品 顧問

Co-founder of KDDI, Distinguished Professor at Kyoto University, Advisor to Abe Yoando Pharma

千本財団 公式HP

1942年奈良県出身。京都大学工学部電子工学科卒業。 日本電信電話公社(現 NTT)入社後、フロリダ大学Ph.Dを取得。 1984年に第二電電株式会社(現 KDDI)を稲盛和夫氏らと共同創業し、専務取締役、取締役副社長を歴任する。慶應義塾大学 大学院教授を経て、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学の客員教授のほか、世界最大の通信社・ロイター取締役を務める。1999年 イー・アクセス株式会社創業。2005年 イー・モバイル株式会社(現 ワイモバイル)を設立、代表取締役会長兼CEOを務める。2014年 株式会社レノバ社外取締役に就任、翌年には代表取締役会長就任。2023年 Assurant Global Strategy Architect就任。同年、京都大学大学院特命教授就任。