阿部養庵堂薬品 代表・阿部朋孝が、あらゆる業界の第一線で活躍する巨人たちとの対話を通じて、若さと成功への知見を得る対談シリーズ。
記念すべき第1回は、現KDDIの共同創業者・千本倖生さんにお話を伺います。
千本さんがどのようにして若々しさを保ち、長年にわたる成功を収め続けることができたのか、その秘訣を深掘りしていきたいと思います。
千本先生が38年間続けている驚くべき最も効率の良い投資とは？
阿部 「生涯現役の仕事術」をテーマに、まず初めに千本先生の日々のスケジュールをお伺いしたいです。千本先生は現在81歳でいらっしゃいますが、何時に起きて、日中はどのようなお仕事をされて、何時に就寝されるのでしょうか？
千本先生（以下敬称略） 普段、東京の自宅で過ごす時は、大体朝の5時か5時半ぐらいに起床し、納豆とチーズ、牛乳などの発酵食品で朝食を簡単に済ませます。本当はきちんと食べなくてはいけないと思っているんですが、朝は時間がないことが多く、炭水化物は摂りません。起床から朝食を食べて家を出るまで20分ぐらいですかね。6時過ぎに自宅を出発し、自分で運転して、まずはジムへ向かいます。
阿部 起きて20分後に、ご自分で運転されて向かうのですか？
千本 運転手に頼むと、4時には起きなくてはいけない。それは可哀想なので、私は朝は必ず自分で運転してジムに行きます。昼間だと忙しくて結局行けなくなってしまうので、顔だけさっと洗ったら髭も剃らずに車に飛び乗り、朝の6時半にトレーニングをスタートしています。もうかれこれ、38年間続けています。
阿部 38年間も！毎朝のジム通いをそんなに長く続けられているんですか。週に何回程度トレーニングされているんですか？
千本 東京の自宅にいる時に限りますが、月曜日から金曜日まで毎日です。もう習慣になっているので、夜の何時に寝ようが朝5時に起きます。私は意志薄弱だから、習慣化しないと続けられないのです。習慣するには、やはり継続期間が10年単位にならないとだめですね。1年2年じゃ習慣になりません。10年続けて、やっと習慣になる。大体は3ヶ月程度でやめてしまうからね。
阿部 3日、3週間、3ヶ月と、「3」がつくタイミングが一番やめやすくて怖いタイミングだと聞きますよね。
千本 38年間ジム通いを続けている人は、同じジムでは誰もいません。最長記録、最高頻度、最高回数と、そのジムで全て一番です（笑）。ジムを継続するには、やはり高級なジムがおすすめです。私の通っているジムは、入会金が800万、年会費が7〜80万です。
阿部 そんなに高級なジムがあるんですね！まだまだ知らない世界がありますね。ところで、なぜ高級じゃなくてはいけないのでしょうか？
千本 高級なジムほどスタッフが揃っていて、設備が綺麗で、快適さが別格なので、その感覚は継続するうえで非常に大事です。
例えば、ジムで走った後もスタッフの皆さんがしっかり設備管理をしてくれ、全ての環境が清潔に保たれるよう、常に徹底されています。金額だけ聞くと高く感じますが、私のように365日のうち200日程度通っていると、投資としては割安だと感じています。
ジムでは、1時間ほど時速6キロ程度で早く歩くか、ゆっくり走るか、いずれかの有酸素運動をしています。走りすぎると過酸化水素が出てしまうので、やり過ぎないように気をつけています。コツは手を大きく振ることですが、意識的に振りすぎてもだめで、力を抜いて自然に任せて振ることが大切です。これが結構大事なの。上手くなってくると、無意識にできるようになります。座禅と同じですよ。
※過酸化水素…エネルギー代謝の際に細胞内に発生する物質で、活性酸素の一種。過酸化水素は細胞を傷つけるため、有害と捉えられています。
阿部 そういった技術というか、体の動かし方は、どれくらいで身についたのでしょうか。
千本 5年ほどかかりました。
ゴルフも同じように力を抜くことが大切なゲームなのですが、これが非常に難しいのです。私は50年続けてますが、30年経った頃にやっと少し分かってきました。ゴルフは体に力が入るとボールが思ってもみない方向へ行ってしまい、ろくなことになりません。私の場合ゴルフは歩くために行っているので、カートには絶対乗りません。
阿部 カートには乗らないんですね。ちなみに、ゴルフではどのくらい歩かれるのでしょうか。
千本 大体、1万8000歩くらい歩きます。土日はジムに行かずゴルフに行くことが多いのですが、ゴルフの後に時間ができた場合は、夕方にストレッチのためジムに行きます。30分間、1対1でトレーナーの方と一緒にストレッチをするんですが、そこまで対応してくれるから高級なのです。ですが、私は安いくらいだと思っています。
これまでに、あらゆる投資を実践してきましたが、一番良かった投資は、この「健康への投資」です。健康ほど大事なものはないじゃないですか。たくさんお金を稼いだとしても、体が不自由な状態だったら意味がありません。
阿部 そこをぜひ詳しく聞きたいのですが、千本先生と同年代の経営者の方々は、今は第一線を退いてらっしゃる方も多くいらっしゃいます。千本先生は、今でも就寝時間が夜0時を回っていることが多々あるかと思いますが、年齢を重ねてもそれを継続できている理由はどこにあるのでしょうか。
千本 本当は遅く寝るのは良くないんです。もっと睡眠時間を取らないといけないのですが、仕事の兼ね合いで深夜2時や3時就寝になってしまい、平均睡眠時間が3時間程度になっていることは医者からも注意されていて、唯一健康管理ができていない部分です。
阿部 ずっと第一線で活躍されている結果として、その状態が続いてしまっている、ということなんですね。
千本 去年（2023年）3月に株式会社レノバの会長を退任しましたが、今は米国ベンチャーや大学理事長など、数十社を見ているため以前より忙しいです。月2〜3回も海外出張していますし、海外企業のボードミーティングは時差があるため「（日本時間で）25時からやりましょう」となります。睡眠時間を確保しにくいのは、仕方ない部分もありますね。
